小説を書く、その方法を垣間見ることのできる一冊
すごいタイトルである。
タイトルの理由は本書の中で明かされているが、断っておくと、イギリス・アイルランドとは全く関係がない。
また私がこの本を手に取った理由もそのタイトルによるものではない。
そう、この装丁。
海外旅行好きの人ならわかるはず。いやいや、こんなこと許されるのか?出版社も異なるのに。この思い切りの良さに惹かれた。
↓参考
本書はイギリス・アイルランドの古代遺跡を巡る旅の日記のはずなのだが、読み終わると、古代遺跡の話はちっとも頭に残っていない。
それより、いかに飛行機恐怖症の人が旅に出るのが大変なのか、が真に迫っていて、読んでいるこちらも、飛行機に乗りたくなくなってしまうくらいの勢いがある。(実際、その話にかなりのページ数が割かれている。)それを酒で紛らわそうと、ワインボトルを続けざまに頼んだり、持参した本を開いたり、格闘ぶりが伝わってくる。いやほんと、気の毒なほどだ。
それから、作者の妄想話。これがかなり面白い。小説のネタが散りばめられている。というより、小説が生まれる一場面を目撃しているような感覚になった。(恩田陸ファンなら更に感激することだろう。)物語は「考える」のではなく、目の前に「現れる」もので、作者はその出会いを待っている。
「世界のあちこちに、お話しの欠片(かけら)が放置されていたり隠されていたりするが、それを首尾よく見つけ出せることもあるし、ちっとも見つからないこともある。私がやっているのは、きっとそういう商売なのだ。」
旅の本というより、小説家なるものを知る本として、お勧めである。